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前野健太ライブ - 暮れゆく街の歌が聴こえる

音楽

 

2015年の終りかけ12月30日に、前野健太さんの歌を聴きにライブへ出掛けた。

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会場は十条にあるcine cafe soto。営業が29日までだったところを、店主の方のご厚意でこの日のライブが実現したそうで有り難い気持ち。普段カフェではフィルム映画の上映も行っているため、中が喫茶スペースと映画のスペースに分かれていて、ライブは映画の方のスペースで行われた。

 

お馴染みのサングラスとど派手なシャツで登場、綺麗に整えられた髭も決まっている。学生時代にいちどこちらに映画を観に伺ったことがあるけれど、その時とは客席が反対を向いていて、前野さんはちょうど映写機を背にする形だった。「ライブ…始めて良いんですよね?」と控えめに笑いを取ってから、歌を歌う自分と、その歌を聴きに来るお客さん、自分と皆とを繋ぐものは歌だけ、この関係性が不思議だし有り難いと感謝の気持ちを示したかと思えば、このライブのチケットが瞬く間に売れたことに触れて、何の告知もなしにライブをしてみたいとも話していた。

 

今日はやけに曲席との距離を詰めたがっていた前野さん。冒頭で「すごい緊張する」「このくらいの(客席との)距離が一番緊張するんだよね」と言いながら、マイクスタンドと譜面台をじりじりと客席の方へ寄せてからライブは始まった。『僕の父は共産党員だった』から始まったこのライブ、新しい曲も古くからの曲も様々、ちょうどよいバランスで。熱心なフアンの方と違って新曲や未発表曲の情報に疎くて恥ずかしいのだけど、『人生って』という曲(多分)がとても良い。時折更新される彼のブログのようなもので前に書かれていた、ジャズ喫茶の70歳の女マスターとの“人生ってなんだと思う”という会話が歌になっている曲。人生は、「あがき」、その言葉の強烈な熱さと重みに圧倒されそうになる。自分の10年後、20年後、30年後を思う。「アート・ブレイキー」忘れらんない

すばるの原稿を送った。
Wi-Fi飛んでるジャズ喫茶。
70の女の人に恋してる
カッコいいんだ
熟女好きとかそういう言葉じゃない
あの方は俺より若いんだ
人生ってなんだと思う 前野さん

あそび ですかね

私は あがき だと思うの

この会話で分かるでしょう
俺よりも若いんだ
心がぶるっと震えたよ

11/19
ジャズ喫茶より

 

恒例のリクエスト大会ではリクエストされたほとんどの曲を、1フレーズだけのものもありながら歌ってくれていた。いつもなかなか出来ずにいたけれど思い切って新しいアルバムの中から1曲リクエストをして、忘れられてしまったかなと諦めかけていたら「後でちゃんとやりますからね」と1曲丸々、熱く歌ってくれたことに嬉しく思った。素晴らしい演奏は、歌を超えた何かだった。自分が今歌を聴いているのか何なのか分からなくなってしまった。高い建物が立ち並ぶ東京の街を職場へ急ぎながら、「ビルの影に隠れても 歌はこだましてるよ」というフレーズを思い出すと涙が出そうになる。

 

『TOKYO STATION HOTEL』を歌う前に、曲名に関連してお店の情報をひとつ、前野さんが教えてくれた。前野さんの背後にあった立派なスタンドランプ(?)は、旧東京ステーションホテル建て替えの際に出たものなのだそう。またバーカウンターに至っては丸ごと移築されたらしく、なるほど、だからカウンターの鏡には“Oak”の文字があったのか!と驚き。

 

音作りに色々試行錯誤していて、ギターのピックアップを切ってボーカルマイクを通して音を出したりしていた。サウンドホールをマイクに近づけて弾くので自然とクラシックギターを弾く時のようなスタイルに、その状態で、リクエストの曲など数曲。

 

後半では更に距離を詰め、客席の目の前まで来て歌ってくれた。最前列に座っていたので、ネックが頭にぶつかるのではとハラハラする程!ギターのシールドを抜いて、ボーカルマイクもなしの生歌。『18の夏…』など。18の夏を歌い終えると、「川島なお美さん、ありがとう」と、ボソッと。

 

アンコールでは、猫ちゃん模様のシャツに早着替えして現れた。ノリノリだな。ライブの終盤、歌詞を変えて歌われる『100年後』。あってよかった。「2115年12月30日 JR 十条駅からすぐ 、階段ことことことこと降りた所にある cine cafe sotoで 待ち合わせ」。イヤホンでひとり聴いているときはファンタジーの様に響くこの曲を、生で、大勢の人がいる場所で聴くと一気に現実味と緊張感を帯びた曲に感じられる。100年後。会場にいるすべての人が100年後には恐らく誰一人生きてはいない。この場所だって100年後にはないかも知れない。誰も、そのことについての驚きや不思議を改めて口に出すことはないけれど皆、同じ気持ちを抱きながらこの曲を聴いているのだと勝手に思っている。今ここに居る全員が再びこの場所に揃うことは無いけれど、でも確かに今共有しているこの時間。何とも言いようのない切なさが込み上げて、でもそこに感傷はない。何か、永遠みたい。100年後も、生の歌声を聴きに人々が集う、そんな風景はあるんだろうか


これはWWWバージョン。

 

アンコール後、最前列のお客さん一人一人と軽い握手を交わして爽やかにはけた後、ダブルアンコール、「さっきの終わり方よかったんだけどなぁ」とぶつぶつ言いながら、更に客席の方へ「もうチューとかしちゃおうかな」と分け入って、空席のあった2列目の客席付近で『天気予報』など。

 

そういえば、来年新たな取り組みがあり、皆さん離れていってしまうかも、これでさようならの人もいるかな、なんて冗談を言っていたけど何が待っているんでしょう。

最も強い者が生き残るのではなく、

最も賢い者が生き延びるのでもない。


唯一生き残ることが出来るのは、

変化できる者である。

前野さんをみていると、何となく、この言葉が思い浮かぶのです

 

 今日のライブは、前野さんの妖艶さや色っぽさよりも、ぱっきりと乾いた明るさの面が際立っていたライブだったように思った。ライブだけじゃなくてアルバム『今の時代がいちばんいいよ』を聴いてもそう感じたから、今日のライブだけがそうだったというよりこれが前野さんの変化そのものなのかも知れない。そして2015年の締めくくりにこのライブに来られたことの意味や必然性を勝手に感じていたり。2015年も、私はどうしようもない人間で、どうしようもない毎日だったけど、今この瞬間がいちばんいいよ、と思いながら毎日生きていきたい、2016年も。2016年はちょっと目標もあるので意識して進んでいけるといい。

普段こういうものを書かないけれどどうしても忘れたくないライブだったので書き留めておきました。

 

 

それぞれの営みを、街を、人生を、毎日を、時代を、静かに激しく肯定してくれる歌と言葉たちを思い返して、ひとり深く感動を噛み締めた、2015年大晦日の早朝なのでした。

 

【不確かなセットリスト】順番も曲名も自信がなく、抜けている曲も多いかも。。

僕の父は共産党員だった
ギターがあれば

虫のようなおっさん

あなたの匂いを覚えてしまったから
新幹線の速さで毎日は
人生って
春の夜の夢のごとし
吾郎
暮れゆく街の歌が聴こえる
とんこつラーメンくさい街(リクエスト)
西港(坂口恭平
東京の空
SHINJUKU AVENUE
花と遊ぶ
青い部屋
love
子どもの日
雨の合コン(リクエスト)
街の灯(リクエスト)
海が見た夢(リクエスト)
プッシーキャット(リクエスト)
ばかみたい(ばかなやつ)(リクエスト)
野蛮なふりをして(リクエスト)
18の夏…
今の時代が一番いいよ
だれかの

TOKYO STATION HOTEL
オレらは肉の歩く朝
豆腐

100年後
天気予報